第三回 嵐の祭祠場 3-1      
「物陰の赤目先生(二刀流)」A




『嵐の祭祠場』は、とある蛮族が死と嵐を祭った場所。
で、そこにデーモンが住み着いてからは、あっちこっちからソウルに飢えた亡者の群れが来たわけで、つまりここは墓場なわけだ。
えーと、そりゃ腐るほどいるよな、ローリング骸骨。
「しかも援護射撃する骸骨もいるって何だーー!」
嫌な場所にいんだよ、弓の骸骨。
のこのこに近寄ると、奥の方のローリング骸骨に見つかるっていうな。
なんかこの絶妙な配置に、すげぇ悪意と手間を感じるぜ。



 

BASSA BASSA BASSA……



骸骨たちを各個撃破で進む俺の頭上を、大きな『何か』が飛んでいく。



 

BASSA BASSA BASSA……



……えーーーと、『エイ』って空飛ばねぇよな、海の生きモンだよな、普通。
「何だ、俺も慣れたなー」
あれだ、『エイ』がばさばさ飛んでるくらいで驚いてらんねーよな。タコだって魔法使うし。
うんうん頷き、二つ目の門をくぐった、その、途端。



――――ガツン



衝撃が、俺を襲う。
物理的に、ではなく、精神的に。
門の内側は、中央に井戸を配した広場だった。
ところどころ崩れた石壁、その、奥に。

『拡散の尖兵』の、奇妙な黄色い目が、ギョロリ、俺を見つけた――




「俺のトラウマが何でこんなとこにいるんだああああああぁぁーーーー!」
……しかも、位置が悪すぎる。
奴は俺から見て広場の左奥、先に進む細い道を塞いでいる。
ちょっくら近づいたら、持ってる大斧でつぶされそうになった。
あっぶねー、腹の中身出す感覚は一回体験すりゃーもう十分だ。つぅか腹いっぱいだ。
真正面から進んでも、あれだ、< YOU DIED >なんで、抜け道を探すことにした。
二つ目の門はその内側が通路になってる。
入り口から左の通路に進むと、がちゃん、とすぐに『光る床石』を踏んじまった。



HYUN! HYUN! HYUN!



案の定、通路先の壁から仕掛け矢が飛んできやがったよ。
えぐい罠だよなー、盾構えてなきゃ即死だぞ?
抜かりはないぜ、と進んだ俺だが、世の中ってのはほんとーに厳しくできてるらしい。
角を曲がった先は通路の外、ちょっとした丘になってるんだが、そこにも骸骨がいた。



真っ黒で二刀流で。

目が赤い骸骨が。




「やっぱり赤目は怖えぇぇぇぇ! 先生すみませーーん!」
殺るっきゃないよなー、目が合っちまったし。
『ソウルの名残』(敵の気をそらすアイテム)や魔法を連発して、辛くも勝利したぜ……。
とはいえ、この赤目骸骨は貴重な武器、『欠月のファルシオン』(曲刀。『欠月』の名を冠する武器は、魔力の高さと攻撃力が比例する)を守っていた。
ひょっひょー、いいんじゃね?
腕力もいいが、魔法のほうが敵によく効くし、俺、魔法使いになろっかなー。
実はこの『欠月のファルシオン』、強化を繰り返して最後の最後まで使い続けた武器なもんで、ほんとにいーモン手に入れたわけだ。
ほくほく顔の俺はその後も通路の探索を続け、
「痛ってぇ! 背中に矢が刺さっとる!」
「ぎゃーー! ローリング骸骨に挟まれたああああ!」
「『複合ロングボウ』(威力の強い弓。筋力・技量が必要)、ゲットだぜ!」
最終的に、牢に捕らわれていた探索者ブライジを救出することができた。
このおっさん、俺と同じ放浪者なんだが、どーにも人型の敵を殺すのが嫌になって、ここ『嵐の祭祠場』に来たそうだ。
確かに骨ばっかりだもんなー、敵。
気持ちはわかるぜ、おっさん。
きっとそれまでの心労がたたって、そんなきれーなM字ハゲになっちまったんだな……(泣)
ブライジのおっさんから矢やらクナイ(毒が塗ってある投擲武器。数発当てると、相手を毒の状態にする)やら買い込んで、俺は作戦を練った。
要は『塔の騎士』と同じだ。
接近戦がダメなら、遠距離戦だろ?




「うはははははははっ! 頭脳戦の勝利だ!」
たとえ一発の矢のダメージが20くらいしかなくても、それを100回繰り返せば2000くらいのダメージになるよな。
俺が狙撃ポイントとして選んだのは、二つ目の門の上。
ここに弓の骸骨がいたんで、「俺もこっから狙えばいいんじゃね?」と思いついたわけだ。
下の広場から『拡散の尖兵』を狙うのも試したんだが、広場の上を飛んでるエイがなんか槍っぽいの打ってきたんで止めた。
……俺、エイって生き物が、だんだんわからなくなってきた。
とにもかくにも、矢が足りなくなればブライジのおっさんから買って、ひたすら矢を打つ。
さっき拾った『複合ロングボウ』が引けるよう、かぼたんに筋力レベルも上げてもらったしな♪
「逝ってしまえ! 俺のトラウマ!」


 

GYAOOOOOON…………


弓を引くこと、20分。
シャキーン、と最後の一発が決まり、俺のぴちぴちの肉体を潰した『拡散の尖兵』は、儚くも光の泡と分解されていく。
「いやあ、俺ってばかなり順調?」
リベンジ果たして気分も爽快、足取りも軽く、俺は広場の先を進むのだった。


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