第一回 ボーレタリア王城−1      
「激突! 赤眼先生!」@ 




こんちわ!
オーゾ・シャープだ。
死んだはずの俺だが、魂だけが『楔の神殿』とやらに捕らわれ、あちこちにいるデーモンを倒さ なけりゃ肉体が復活しないことになっちまった。
え?
今はどうなってるんだ、だって?
今の俺の体は『ソウル体』ってやつで、早い話、幽霊だ。
体は燐光を放ち、足はあるが足音はしない、切りつけられても血は出ない。
まさに亡霊だぜ。
『楔の神殿』にいた人々の話を聞き(奴らの紹介は後でな)『要石(かなめいし)』を通ってここ、元凶とされ るボーレタリア王城の正門に来たわけだが。



わけだが。


いやいやいやいやいやいやいやいやはやいや。
無理だろ、デーモン倒すなんて。



「せいやぁ!」
俺は奴隷兵の後ろに回り込み、剣で串刺しにした。
断末魔をあげ、奴隷兵は崩れ落ちる。
その体から出て俺の体に染み込むのは命の源、ソウル。
ここじゃ、これがなけりゃ武具の修理も買い物もままならない。
奴隷兵の死体を調べる。
殺したはずなんだが、ピクピク動いてきもいなー。
神殿に戻ってまたここ来ると、こいつら何でか生き返ってるんだよなー。
お、ラッキー、三日月草(HPを多少回復)だ。
死体漁りは趣味じゃないんだが、こうでもしないと俺の身(HP)が保たない。
襲いかかってくる奴らは、もう人じゃあない。
ソウルをデーモンに取られて飢えて、俺たちを見つければガツガツ寄って来やがる。
『俺たち』って何だ?、と思うだろ。
それがこの濃霧の中のおかしなところだ。
ここには裂け目からに入り込んだ、数千・数万の俺の先輩たちがいる。
一度ぶっ殺されて、 『楔の神殿』に魂を捕らわれたお仲間だ。
ただし、存在する世界が違うらしい。
彼らの姿は白く透け、見ているとふっ、と消えてしまう。
一応、向こうもこちらがわかるようで、視線が合うと手を振ってくれる奴もいるが、声は聞こえ ず、さわれもしない。
ま、あちらさんもがんばってんだなー、と励みにしている。
で、一番ありがたいのが、彼らの『血痕』と『メッセージ』。
『血痕』に触れると、彼らの 死の直前の行動が再生される。
妙な場所に『血痕』があるなと思って再生すると、罠や待ち伏せ がわかって重宝する。
『メッセージ』は短い伝言で、アブない場所やらお宝の在り処やら教えてくれたりする。
たまに嘘もあるけどな。
話がそれた。
三日月草を拾い、俺は王城の練兵場(?)から城壁を見上げる。
正門前からここまでは長かった。


門が開いてないんで、脇道行ったら穴に落ちて、
< YOU DIED >
ダッシュで奴隷兵の間を駆け抜けたかったがスタミナ切れで囲まれ、
< YOU DIED >
階段上がろうとしたら上から鉄球が転がり落ちてきて、
< YOU DIED >
戦闘にも慣れて「俺ツエーw」で青目の騎士に挑んだら、盾弾かれてがっつり斬られて、
< YOU DIED >


……………………人間、油断はいけんよ、ホントに。
ちなみに死ぬとそれまで貯めたソウルが、置き去りになる。
死亡地点まで辿りつければ回収できるが、途中で死んだらそのソウルはパーだ。
盾を構えて慎重に進むと、小さな門の奥に小さな荷物置き場が見えた。
……………………。
やばい。
いるね。
これはいる。
門の脇に、絶対、待ち伏せがいる。
じりじりと近づく俺に、声がかけられた。
「おーい、ここだ、助けてくれないか!」
……幻聴?
あ、ちがう。
全身鎧の騎士が一人、手を振っている。
一応、真人間っぽいな。
荷物置き場の奥は高く石が積んであり、騎士はその上にいた。
……どうやってあそこまで登ったんだ?
足場ないぞ?
不思議に思いながらも、奴隷兵s(5〜6体)をさっくり各個撃破。
汚れを払っていると騎士が足場から降りてきた。
「どうもありがとう」
声が若いな。
兜で顔はわからんが。
つうか、鎧着けて俺と同じ位の背丈って、中身はわりと小さくないか?
この体格で頭までの甲冑装備をつけて動いているんだ、それなりの訓練は積んでいると思うが。
俺は重いのが嫌いなんで、防具は全て革製だ。
鉄製の篭手は重くてなー。
兜も、前が見えにくいしなぁ。
――などとつらつら考えていると、騎士が物をくれた。

「私はボーレタリアのオストラヴァ。これは感謝の気持ちだ、受け取ってくれ」


……『真鍮の遠眼鏡』(遠くが見える。とても高価)だった。


俺はオストラヴァと名乗った騎士の装備を、もう一度じっくりがっつり視姦して観察した。


…………『ルーンの剣」と『ルーンの盾』(むちゃくちゃ高価で、伝説の武具級。所持者はたいてい王族or英雄クラス)だった。


「私はもう、行かなければならない。それでは」
愕然としている俺を放置し、オストラヴァは城内を進んでいった。



……いや、俺が軒並みそこら辺の奴らぶっ倒してるから安全だけど奴隷兵に苦労するレベルなんだからそんなに徘徊するなよ助けた意味ないだろっていうか。





あの若騎士、何者?











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