第二回 ボーレタリア王城 1-2      
「ランカーデーモン、塔の騎士を確認」A




  < YOU DIED >
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け、結局、犬に3回も喰われた……。
これ以上喰われると俺の心が折れそうなので、対策を練ることにする。
あれだ、同時に何匹も相手にするから食われんだよな。
そんなら一匹ずつ戦えば負けるわけがない!
ということでちょいと道具袋を漁り、『盗賊の指輪』(敵から見つけられにくくなる)を装着。
そんでもって、暗い通路をそろーーーっと進めば……。
「はっはっはっはっは! ざまあ見やがれ!」
犬め!
一匹ずつなら負けねぇ!
そんなこんなで犬を突破し奴隷兵の物売りにたどり着いたんだが、通路は結局行き止まり、最後はどうしても上の通路(王の飛竜の餌場だな)を通らにゃならん。
火炎壷を買い足し、徘徊する王子を追い越し、飛竜が舞う通路へ。



KSYAAAAAAA!

Booooooooooooooooow!!



炎のブレスのタイミングを見計らってダッシュ!
「犬にさんざん殺されたからな、いつ走ればいいかはお見通――ぐはぁっ!」
浮かれてたらパシュッ、と矢が刺さった。
いってー。
通路の先にはボウガン兵が4体。
うかつに斬ると時間差で矢が刺さる、嫌ーな撃ち方だ、ここは慎重に盾を構えて進むか……ん?

 

GASYON……GASYON GASYON



 ボウガン兵の後ろ、奥の通路に、青目の騎士がいた。



 二体も。



「な、何で青目がいるんだ馬っ鹿野郎ーー!」



  < YOU DIED >




……とまあ色々あったが、とうとう青目×2を撃破し、結晶トカゲ(貴重な鉱石を落とす)も狩り、ついに霧の前までやってきたぜ。
この霧の向こうに、デーモンがいる。
『デーモンは近いぞ』ってメッセージ読むと、こう、身が引き締まるな。
装備よし、体力よし、回復アイテムよし。
ソウル体だから気のせいかもしれんが、口の中はもう、からっからだ。
「……行くか」
覚悟を固め、俺は霧の中へ入った……。




 

脚。
地響き。
巨大に強大な、鋼の爪先。
続いて落ちる、重厚で長大な盾。
石畳を踏みしだいて震わせ、泰然とこちらを見下ろす、鋼の甲冑――塔の騎士。
名の如く、囲む石壁より塔よりそれは大きく、ただひたすらに、巨大。



…………絶望。



見上げた奥の城壁の上、血と悪意にまみれる王の公使が、ニタァ、笑った。





  < YOU DIED >



「無理無理無理無理だからマジでーっ!!」
何だあれは何だ、何々だあ・れ・は。
踏まれた、もう呆気なく当ったり前のようにプチッ、って踏まれたよ畜生。
「か、勘弁してくれ……orz」
俺はしがない一介の放浪者なんだ伝説の勇者じゃないんだ名も無き戦士なんだ……と、かぼたんの美脚にすがりつくこと3分。
「あー、まじでどうすっか〜」
対策を練るっきゃねぇか。
塔の騎士はでかい。
非常にでかいが、その分、動きも鈍い。
足下を切ってまわりゃあ何とかなるだろう。

と、いうことでリベンジ。



  < YOU DIED >
  < YOU DIED >



……問題は、城壁の上にいるボウガン兵たちだ。
あれ邪魔、ほんと邪魔。
矢が当たって怯んでるうちに潰されて< YOU DIED >じゃ、ほんとにやってらんねー。
かぼたんにソウルレベル上げてもらいながら、色々考えた。
知力15を振り絞って考えた。

高台は登るためにある。
物陰は隠れるためにある。
魔法は、使うためにある



「うはははははははは!!」
策が当たると、本っ気で気持ちがいいのな。
俺が立っているのは、塔の騎士の周囲の石壁の上、ボウガン兵たちが配置されていた場所だ。
ここからは塔の騎士の頭をばっちり狙える。
デーモンからの攻撃もくるが、さっと隠れればダメージは受けない。
そんなわけで、さっき覚えた魔法『ソウルの矢』(細い光が当たるとダメージを与える)をガンガン使ってる間も、もう嬉しくって笑いがww
いい、魔法いいぜ、ちょっとハマる。
弓で狙ってもいいんだが、せっかく触媒拾ったし知力(MP最大値に影響あり)15あるし、ってなきっかけだったが、こりゃ悪くない。
とっときの古い香料(MP回復薬)をあおり、物陰に隠れてタイミングを見計る。
塔の騎士からの攻撃は、全く当たっていない。
このまま 押 し 切 っ て や る。
「人間を、舐めるなあああぁぁぁぁーーーー!」
青白い『ソウルの矢』が、塔の騎士を直撃し、巨人の断末魔が響きわたる。



< YOU REVIVED >



おっしゃああああああーーーー!
殺ったあああああぁぁ!
体復活したあぁーー!
生身だーーー!
勝ったぜ! 
無名戦士舐めんな!
……いやぁ、あれだな、頭だよ頭。
力押しだけじゃ勝てない時もあるんだよ。
工夫しろってことなんだよ、うん。
よし、景気づけにかぼたんの美脚にすがりに行くか。


――野たれ死にしないで、この霧の世界から無事に抜け出せるかもしれない。


そんな(儚い)希望を持ち、俺は意気揚々と楔の神殿に帰還したのだった……。





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