第二回 ボーレタリア王城 1-2      
「ランカーデーモン、塔の騎士を確認」@




こんちわ、オーゾ・シャープだ。
前回はショックのあまり、かなり凹んだ。
実は肉体が復活しても一時的なもんで、死んだらまたソウル体になるってことも判明し、また凹んだ。
いや、飯食わなくても餓死しないからいいんだが、生身に戻ったんだから寝たり食ったり憂さ晴らししたりとか、色々本能を満足させたいんだよ色々。
せっかく『楔の神殿』にカワイ子ちゃんたちが出てきたっつーのになー。
あ、『楔の神殿』にいる奴らの紹介は次でする予定だ
何でかって?
……ここでもう一人増えたんだよ、神殿に長居する奴が。




「あーーー痛い痛い痛いぞお前!」
正門内部、デーモン「ファランクス」を燃やした広間を奥に進むと、荷馬車や馬の死骸が転がる大部屋に出た。
資材置き場だったんだろうな、荷馬車の車輪やら木箱やら木材やらが散らかっている。
で、その隙間から、子ファランクスが槍投げてくるんだよ。
奴ら真っ黒だし、大部屋は暗いしよく見えねないし、まじ痛いし、さっきは後ろから投げられて、




  < YOU DIED >




……貫通したぜ、背中。
でもまあ、子ファランクスを倒せば鉱石(武器強化に必要な材料)がよく拾えるから、いいんだ。いいことにした。死んだ分だけもと取ってやる。
どうにか大部屋を奥に進むと、明るい光が差し込んできた。
どうやら屋外にある城壁の上の通路に繋がっているようだ。
「やっぱ外はいいよなー。暗い所は勘弁……ん、城壁、の上の、通路?」






KSYAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!




……ある意味、予想通りで泣ける。
大部屋を抜けた先は、城壁上の通路になっている。
「崖の長路」っていうんだと。 物見砦のような建物がいくつも作られ、はるか先は騎士たちが住んだ王城の内郭へと続いているようだ。
で、両側は崖な細い通路には逃げだそうとした馬車やら荷物やらが散乱し、その隙間に奴隷兵がうぞうぞして――



KSYAAAAAAA!

Booooooooooooooooow!!



はい、飛竜でしたー。
しかも「王の飛竜」っていう、でかいやつ。
まただよ。
まじかよ。
これ抜けなきゃならんのか。



KSYAAAAAAA!

Booooooooooooooooow!!


あ、奴隷兵が焼かれて、俺のソウルになった。
とにもかくにも、進まにゃならん。デーモン殺して、早く完全復活したいしな。
俺は大きく息を吸い込んでスタミナを溜め――全速力で走り出した。
「来るな来るな来るなまだ来るなあーーー!!」
荷馬車を越え、荷物を越え、死体を越え――あ、あの奴隷兵の死体、何かアイテムがくっついて――
「ってアホか俺は立ち止まったら――」



KSYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!



  < YOU DIED >


奴隷兵が大したもの持ってるはず、ないよな。
……「三日月草」(HPを少しだけ回復する。最近は余り気味)だったぜ。
よし、奴隷兵は無視でもう一回。
「行け行け行け行けーーー!!」
荷馬車を越え、荷物を越え、遺体を越え――あ、遺体だとわり貴重なアイテムなことが――




『取得アイテム:「三日月草」×3』


KSYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!




  < YOU DIED >




何だそれ遺体って普通わりと役に立つ貴重なアイテムとかソウルとかをくれる偉大な先人たちの贈り物じゃないのか!?
「配置が絶妙すぎるわーー!!」
憂さ晴らしに大部屋で子ファランクスを狩ってたら、隅の方から声が聞こえてきた。
「おーい、こっちだ」 こ、この声は。
大部屋の角に、実は地下通路があった。
この通路、本来は城壁の下を通って次の物見砦まで進めるらしい。残念ながら今は奥に続く道は格子が降りていて通れなかったんだが、その格子の向こうに奴がいた。
「オストラヴァだ」
この間助けたはずの国宝級装備の兄ちゃんだが、何でこんな所にいるんだ?
話を聞くと、あれから先に進んだこいつは、またも敵に追い詰められてこんな所にいるらしい。
「すまないが、また助けてくれないか? この先の通路にいる兵士たちを排除してほしい」
かまわないんだが、結局、城壁の上を通るらにゃならんらしい。
三度目の正直、俺は渾身の力を振り絞り、城壁の上を駆け抜ける!
「俺は最初っからクライマックスだーーーーーー!!」



KSYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!


GGGGGGOOOOOONNN!!


ぎりぎりだよ、あっぶねーー!
しかも建物そのものが振動していてちと怖い。
あんな炎で焼かれたら、そりゃあソウル体だって蒸発するよなー。
物見砦の上に登ると、「木の触媒」((魔法を発動するために必要なアイテム)を入手。これで俺も魔法使いか。童貞じゃないぜ、ちなみに。


KSYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!


目の前を飛竜が飛んでいく。
おお、圧巻だー。
物見砦を下に下に降りると、地下通路が延びている。
明るい城壁上の通路を進むこともできるが、竜はもう嫌なんで、地下通路を進むことにした。
地下の通路は、大部屋に戻る方向と、先の王城へ進む方向に伸びている。
まずはオストラヴァは助けるか。
大部屋に戻る方向へ地下通路を進み、弓兵たちをさくっと撃破。
通路の奥まで進んで板を立てかけたバリケードを壊せば、オストラヴァ発見。
「ありがとう、これで二度目だな。これで先に向かうことができる。これは、感謝の気持ちだ、受け取ってくれ」
暗月草(使用者を完全に回復する)だ。やったぜ♪
アイテムを仕舞っていると、オストラヴァが通路を見回し小さく叫ぶのが聞こえた。
「だめだ、誰もいない……何故なんだ……なぜこんなことに……父上」
……あーー、今、「Father!!」って聞こえたな。
なんとなく装備からいいとこのぼっちゃんだよこいつ、とか思っちゃいたが、あれだ、こいつ、この手の定番、亡国王子だ。
昔話を聞くたびに不思議に思うんだが、ほんとお偉いさんの子どもって生きのびる率が高いよな。俺なんか一般庶民だから、「この災いでたくさんの国民が死んでしまいました」とか一行で終わっちまうんだろうな。
――などど考えていたら、やりやがったよ。この王子。
「だからあんたはうろうろうろうろ、徘徊すんなー!!」
俺はあんたの臣下じゃねぇ!
なんであんたの面倒見なきゃいけねぇんだよ!
うろうろすんなー!
ダッシュで王子を追い越し、地下通路を先に進む。
奴隷兵じゃま、っつーか壁際に隠れてるんのがむかつく。
幸い、王子もそんなに先まで徘徊しないようだ。俺が地下通路に降りてきた階段を登っていった。
うん、上の敵はもう倒したからいいけど、あんた、うろうろすんな。
せっかく助けたのに、死んだら寝覚めが悪すぎる。
「王子にイカれた行動されると、ほんと困るよなーー」
順調に地下通路を進んでいると、奥から獣の遠吠えが聞こえてきた。


woooo……ooonnn……
woooo……ooonnn……


……犬っぽいぞ。
野犬は、まずい。
ああいうのは群れるとタチが悪い……ん、待てよ、ちょっと待て俺、デーモンやら人外やらの巣の、「ここ」にいるってことは――
「しまった普通の犬じゃねぇよってか、5匹も来やがったーー!」



wowwowwow! wowwowwow!
wowwowwow! wow-----wow!!


……この犬、速くてしかも低い位置にいるんで、攻撃があんまり当たらんぜよ、とほほ。 犬に喰われるなんてあんまりだっ、という必死の奮闘もむなしく、俺の視界は暗くなっていった……。





  < YOU DIED >






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