第一回 ボーレタリア王城 1-1      
「激突! 赤目先生!」B




かつては民や騎士たちが行き交い、活気で賑わっただろう、正門内部。
その広間には、蠢いているデーモンは――




き、きもい。
俺の前方でうにょうにょしてんのは、黒いコールのような固まりに、盾と槍を装備した化け物たちだ。
1体が俺より大きいうえに、それが20体はいるね。奴らはスライムのような化け物に乗ったり降りたりしていて、どうやらそれが本体のようだ。
奴らの密集具合を見ていると、遠くの国の密集歩兵戦術を思い出すなぁ(ちなみにこのデーモン本体の名前は『ファランクス』だそうだ。うにょっている盾と槍持ちの奴は『子ファランクス』という愛称(?)がついていた)。
俺のワンダフルボディ復活のためには、このデーモン(たち?)を倒さにゃいかんらしい。


らしいんだが。


「槍痛ぇってか、ずりぃ!」
いやもう、槍って盾で防御しながら攻撃できるから、本当にずるいよな。
シミターで切りつけても、盾で思うようにダメージが与えられねぇ。
接近戦で手間取っているうちに、別の子ファランクスが横から黒い槍を投げてきて、これがまた痛い。
「やばいやばいやばい!」
ダッシュで距離を取り、柱の影に隠れる。草を食ってHP回復しながら、ちと戦術を考えよう。
今のところ、本体が遠距離攻撃をする気配はない。
なら、子ファランクスの排除を優先すればいいよな。
で、子ファランクスは盾が邪魔だ。
盾を弾くか後ろに回り込むのもいいが、数が多いと黒い槍に串刺しにされる。
「あ〜〜〜〜、なんかないか、なんか」
ぼやいて道具袋を漁ってみると、こんなの出てきました。



[火炎壷:中に火種が入っており、投げつけると割れて発火する]
[松脂:右手の武器に塗り、一定時間、武器に炎をまとわりつかせる]


よし、今日のメニューはウェルダンだ。






Booow!
Booow! Booow! Booow!

炎に焼かれ、次々と子ファランクスがはがれ落ちて消えていく。
強い、強いぜ火炎壷。
何体も巻き込んで倒してくれる、お前が好きだ。
手持ちの火炎壷を使いきれば、子ファランクスは数えるほど。
これくらいなら、奴らの槍で集中攻撃されることもない。
俺は武器にべったりと松脂を塗り、火をつける。

Booooooooowww!

燃え上がるシミター。
俺のハートもバーニングだ。
心なし、子ファランクスも怯んでいるように見える(気のせいか)。
俺は大きく息を吸い込み、叫びながら突撃した。
「俺の体返せお前らああぁぁぁ!」



5分後。
「いよっしゃああ!」
首尾よくデーモンを倒した俺は、勝利の雄叫びをあげていたのだった。
いい、いいよ久々の生身の体。
たまんねぇよおいこの重さ。
え?
スライムみたいな、本体はどうしたって?
楽勝、超楽勝でした。
あいつ、攻撃手段が子ファランクス以外なかったんだな。
楽勝すぎて、とどめさした後も「いや待て、再起動するかも」とか思ったくらいだ。
広間には『楔の神殿』へ通じる『要石』が出現し、広間の奥にも進めるようになった。
だが俺は、まだ進まない。
やり残したことが、一つあるのだ。





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