男は議員らを許す。
「私と敵対したのは不幸な誤解が原因だ。この混乱で死者が出たことは残念だが、怨恨を残すのは本意ではない。
私は約束しよう。
一連の騒動で都を離れてしまった全ての議員の方々を許そう。今後20日以内に都に戻り議会に出席するならば、一切の罪は問わない。以前の役職に復帰できる事を保証する」
議員らの顔に浮かぶ、安堵、屈託、憤怒。
「速やかに議会を開催し、次の法案を可決してもらいたい。
一連の騒動による死者を慰めるため、3日間の服喪を行う臨時法。
以前に私が提出した土地法の改定案。
……土地法の詳細は既に書面にして議会に提出してある。吟味してくれ」
男は笑う。
「つまり、市民会にも公表済みだ。都に戻る間、各地の市民の反応をよく見てくれ」
青ざめる議員らに背を向け、男は天幕出る。
外には女の部下が並び、男の部下の一人から命令を受けている。
「……この師団は司令官が指揮不能ということで解任が決定した。兵士達に賃金とともに、西方戦役祝勝用の臨時費を支払って除隊を進めるように。……なお、司令官の身柄はこちらで預かり、充分な注意を払って都まで移送する」
男は部下を引き連れて女の陣地を後にする。
男は女以外の全てを許した。
脱稿 2004.10.02