告白が続く。
男の人生でこれほどに心情を吐露したことはない。
男は思考の過程を示すことを嫌ったし、部下に禁止することはなかったが内心を推測されるのも嫌った。
こうして常々感じてきたこと、思うこと、これからの計画をただ思うがままに口に出す経験に、感動すら湧く。
幼少から他人を従えることに慣れていた男は、自分にその才があることにも早くから気づいていた。物事を立案・実行していくことは何より面白く、周囲を巻き込んで事態を主導するのは何より愉快だった。
上の世代は良かれ悪かれ男を評価する。
下の世代はただ男を慕う。
同世代は最初こそ挑むものの、時を経て男に従う。
男は
男に敵はいても、好敵手はいなかった。
男に同僚はいても、相方はいなかった。
「……まぁ、これで長年の懸案だった土地問題は解決できる。これが滞りなく進めば、2,3世代は十分に保てるだろう。その後のことは、その時の奴らに任せればすむ話だ」
「それで」
寝台から身を起こし、しかし俯いたまま、女が口を挟む。
都にその身を移されて以来、男が耳にする初めての言葉だ。
「あなたは私に何をさせたいのですか。そこまで話をしていったい私にな」
男は女の肩を掴み、顔を向かせる。
「何も。別に何もない。実務の専門は揃えているし、顧問も集めた」
お前は黙って聞けばいい、と男は告白を続けた。
脱稿 2004.10.09
改稿 2004.10.11
改稿 2004.10.28