或ル国ノ話

11.produce



 人々は噂を生む。
  兵士は、女が"歪み"により正気を失ったのではないかと。
  議員は、女はもはや軍務に着くことはないと。
  市民は、女がすでに死んでいると。


 男の部下は言う。
  女は手厚く看護され、生命の危機は脱したと。
  ただし"歪み"により右腕を切除、左足は付随であると。


 人々は囁きを生む。
  兵士は、女が"歪み"により面前に出られぬ姿になったのだと。
  市民は、女が男の配下になったのだと。
  女の部下は、左足は故意に潰されたものだと。


 男の部下は言う。
  女は小康状態のため公には立てぬと。
  男は見舞いにしばしば訪れ、凶刃より庇われた礼を述べていると。


 人々は想像を生む。
  兵士は、女が騎乗することはもうないのだと。
  女の部下は、女は監禁され自由はないのだと。


 男の部下は言う。
  女の療養には時間がかかると。
  女の師団を、男が引き受けると。




 人々はさまざまな声を生んだ。



脱稿 2004.11.13