或ル国ノ話

06.reveal her to have a child



老医師は看護士に暴露する。

「家族がいるか、じゃと?
 ……そもそも、面会に来るような血縁がおらん。
 あの子は孤児じゃ。成人してからは、この都ではずっと独りで暮らしとったようだな。
異動先の辺境地区ではどうだったか知らんがの。
 ……急にどうした?」

「いらっしゃるのであれば、面会を許可すべきだと思ったからです。
 朝から晩まで一日中、外を眺めていたり通りを眺めていたり。
 かといって目を離せばすぐに歩こうとされますし、結局無理をして熱を出されます。
 横になっても天井を見てばかりで、ほとんど口を開かれることもありません。
 このような状態では、回復にも差し障りがでます」

「無口なのは昔からでの。
 全くしゃべらんのも困るが、あのたわけ者が顔を出しとるじゃろう?
 あやつがまくし立てるくらいで、あの子には充分じゃ」

「……子を、お持ちではないのですか」

「結婚すらしとらんからの。いるのであればとっくに来とるだろうよ。
 職務中の負傷での休職扱いになっておる。家族の面会であれば、はじめから禁止されておらん」

「……あの方は、本当にお独りですか?」

「浮いた噂一つなかったの」





「…………妊娠を、されたことがあるようです」





「……………………なんじゃと?」





「下腹部から大腿にかけて、妊娠線がありました。
 出産まではわかりませんが、妊娠は確実です」

看護士は老医師に暴露した。



脱稿 2005.02.06
改稿 2009.09.21